外壁は、建築物の第一印象を決定付けるだけでなく、天候などの環境的要因から建築物を守ったり、断熱性や防音性、エネルギー効率を向上させたりします。
そのため、外壁の材料や塗料選び、外壁の定期的なメンテナンスを適切にすることは、建築物を長持ちさせるために必要です。
本記事では、建築物の外観に大きな影響を与える「外壁サイディング」に焦点を当てます。
外壁サイディングの種類やそれぞれの特徴、メンテナンス方法についてまとめています。
正しい知識を得て、美しく機能的な外壁を維持しましょう。
外壁サイディングとは、仕上げ材の一種です。
サイディングボードともいいます。
従来の外壁は、砂とセメントと水を混ぜた「モルタル」が主流でした。
しかし、1990年代以降、外壁サイディングが主流となり、現代の建築物にも活用されています。
主な外壁サイディングは、以下の4つに分類されます。
現在、最も広く用いられている外壁サイディングは、「窯業(ようぎょう)系サイディング」です。
費用相場は、4,000〜6,000円/㎡くらいです。
窯業系サイディングは、セメント系の原料にパルプや木の繊維を混ぜて成型し、高温・高圧にした窯で硬化させた後に塗装を施します。
名称も窯を用いて生成することが由来とされています。
窯業系サイディングは、木目柄やタイル柄など豊富なデザイン性やセメント特有の優れた防火・耐久性、一定の品質が担保されることなどが特徴です。
加工が容易で施工方法もシンプルなため、水を混ぜた材料を、乾燥していない状態で使用する「湿式工法」のモルタルや漆喰と比べて工期が短く、メンテナンスも比較的容易です。
窯業系サイディングに次いで人気を博しているのが、「金属系サイディング」です。
費用相場は、3,000〜5,000円/㎡くらいです。
金属系サイディングでは、ウレタンのような素材を芯材として使用し、裏側にアルミニウムなどの素材を採用したシートが用いられています。
金属と聞くと重厚な印象を持ってしまいやすいですが、金属サイディングはモルタルの約10分の1と非常に軽量です。
そのため、地震が起こった際に建築物への影響を軽減します。
さらに、断熱性や雨や雪の侵入を防ぐ効果があり、寒冷地では、凍結と解凍による外壁の劣化がなく、吸水しない仕上げ材として広く利用されています。
また、ガルバリウム鋼板などの金属板を使用した「ガルバリウム鋼鈑サイディング」も金属系サイディングの一種です。
断熱材である芯材を表面材と裏面材で挟んだ三層構造が特徴的なガルバリウム鋼板サイディングは、表面材が錆びにくく、焼き付け塗装により長期にわたり美観を保持できます。
「木質系サイディング」は、天然木を基材とし、その表面に塗装を施したものです。
費用相場は、2,000~4,000円/㎡くらいです。
木質系サイディングは、木が持つ自然な温かみを生かしています。
デザインに拘っている住宅などに広く活用されています。
木質系サイディングで注意すべきことは、耐水性の低さです。
塗装が剝がれている状態が続くと、湿った木材が劣化し、外壁の品質が損なわれる可能性があります。
そのため、定期的な再塗装やメンテナンスなどの維持管理費も考慮しなければなりません。
樹脂系サイディングは、塩化ビニル樹脂などのプラスチックを板状に加工したものです。
費用相場は、2,000~4,000円/㎡くらいです。
耐久性に優れており、凍害にも強いため、北米で広く使用されています。
日本でも薄さと軽さ、そして高い強度を持つ素材として、樹脂系サイディングは次第に関心を集めています。
錆や腐食の心配がなく、軽量でメンテナンスが容易ですが、窯業系サイディングなどに比べると、色やデザインの選択肢が限られています。
また、日本で樹脂系サイディングを取り扱っているメーカーが少ないため、普及するまでにはまだ少し時間がかかるでしょう。
モルタルなどの外壁と比較した外壁サイディングのメリットは、以下の通りです。
モルタルは、特徴的な無機質さや独自の質感によりシンプルな外観になりやすくなります。
一方、外壁サイディングはデザインが豊富で、好みの柄や色、質感をクラシックスタイルからモダンスタイルまで幅広く選べます。
サイディングを採用することで、建物の外壁をまるで芸術作品のように変え、独特の印象を生み出せます。
外壁サイディングは、非常に軽量な材質です。
そのため、重心が軽くなり、建築物の耐震性に良い影響をもたらします。
金属系サイディングは、4種類の外壁サイディングの中でも特に軽量で、重ね張りに適しているため、断熱性や防音効果も見込めます。
また、外壁サイディングは、高い防火性を備えているため、長期的な耐久性も期待できるでしょう。
モルタルは、施工する職人によって、品質にばらつきが生じやすい仕上げ材です。
一方、外壁サイディングは、切断や穴あけなどの作業が容易で施工も板を組み合わせるだけのシンプルな作業で済みます。
そのため、単価や初期費用が抑えられ、工期も短くなります。
外壁サイディングのデメリットは、以下の通りです。
外壁サイディングは、耐久年数は長いですが、他の外壁材に比べてメンテナンス頻度が多くなる傾向があります。
メンテナンスを怠ると、外壁の劣化が進み、最終的には建築物全体の耐久性に影響を及ぼす可能性があります。
コーキング材や釘などの部材を含めて定期的にメンテナンスしましょう。
外壁サイディングは、板状のサイディング材を使用するため、つなぎ目が生じます。
時間が経つにつれてつなぎ目の劣化や色あせが進むと、美観を損なう可能性があります。
ただし、つなぎ目に生じた隙間を塞ぐと、外壁サイディングと内壁の間にある空気の流れが妨げられ、湿気が溜まりやすくなります。
そのため、状況に適した対応をしましょう。
サイディングは元々防水性に優れていますが、長期間使用すると防水性が弱まります。
特に、つなぎ目やコーキングの部分が劣化すると、水漏れが起こりやすくなります。
水漏れが起こると、建築物内部に湿気を蓄積し、結露やカビが生じるかもしれません。
また、水漏れは、建築物の損傷や断熱性の低下にも繋がります。
種類や使用している塗料によって異なりますが、一般的に外壁サイディングは、5年から10年、長くても20年ごとのメンテナンスが推奨されます。
メンテナンス時期が来ても慌てないために、やるべきことを把握しましょう。
外壁サイディングをメンテナンスする際、状態を適切に把握することが必要です。
外壁サイディングの劣化を見極めるサインは、以下の4つです。
コーキング材は、外壁サイディングを固定し、隙間を埋めるために必要です。
コーキング材が雨や紫外線の影響で劣化すると、本来の機能を失う可能性があります。
製品によって異なりますが、コーキング材の耐久年数は一般的に5年から10年程度とされています。
コーキング材が黒ずんだり、ひび割れたりしたらコーキング材と一緒に外壁サイディングもチェックしましょう。
塗料の表面が劣化し、粉状になる現象を「チョーキング」といいます。
チョーキングは、塗料に含まれる合成樹脂成分が分解されることによって生じます。
チョーキングが発生する原因の多くは、年数経過による劣化です。
チョーキングが進行すると、塗膜が剥がれ落ち、建築物の内部に水分が侵入しやすくなります。
そのため、チョーキングの兆候が見られた場合は、早めにメンテナンスしましょう。
ひび割れは、時間の経過や水分の浸透が原因で起こります。
ひび割れが起こると、シロアリの発生や雨漏り、柱の腐食など、家全体に広がる様々な問題を引き起こす可能性があります。
そのため、初期段階で迅速に対処することが重要です。
塗装が剥がれると、外壁サイディングに水が浸透し、カビやコケ、サビが生じる恐れがあります。
表面上の問題であれば、洗浄のみで落とせます。
しかし、放置すると深刻なダメージを引き起こし、最終的には交換が必要になるかもしれません。
ここからは、外壁サイディングのメンテナンスですべきことを紹介します。
自分でできることもあるので、できることから対応しましょう。
まずは、外壁の状態を把握することが重要です。
状態の確認は、ハンマーや専用の器具を使って外壁を軽く叩き、音を確認する「打診検査」やクラック計などの計測器具を使う検査など、専門的な知識が求められます。
しかし、ひび割れや変色など目視でチェックできることもあります。
普段から外壁の状態に気を配りましょう。
外壁に汚れが蓄積すると劣化を早める可能性があります。
そのため、中性洗剤などを使い、柔らかいスポンジで汚れを優しく拭き取りましょう。
また、高圧洗浄機を使用することも有効ですが、外壁サイディングを傷つけないように、適切な水圧で使用しましょう。
小さな損傷やひび割れ、水漏れは、専用の補修材や防水材を使用して修復することが可能です。
また、小規模な変色も自分で塗装できます。
ただし、大規模な損傷や水漏れ、外壁全体の塗装は、専門の業者に依頼する方が良い場合もあります。
程度をしっかり把握し、適切な判断をしましょう。
損傷や劣化が激しい場合は、外壁サイディングの重ね張りや張り替えが必要です。
張り替えよりも重ね張りの方が費用が抑えられますが、見逃した外壁本来の損傷や劣化が将来的に問題を引き起こす可能性があります。
外壁の状態に適した施工をしましょう。
また、高所をメンテナンスする場合は、足場を組むことがあります。
足場は、別途費用がかかるため、屋根のメンテナンスなども併せて行うのがおすすめです。
今回は、外壁サイディングの種類やそれぞれの特徴、メンテナンス方法を紹介しました。
外壁サイディングは、建築物に個性的で魅力的な外観を与えるだけでなく長期的に外壁を保護します。
また、メンテナンスは、建築物全体の耐久年数を延ばします。
ニーズに合った外壁やメンテナンス方法を選び、建築物の価値を維持しましょう。
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